テキサスの農家は太陽光で年20万ドルを得る─日本の農地制度との違い

テキサスの農家は太陽光で年20万ドルを得る─日本の農地制度との違い

本記事は、BBC News(2026年9月)“How the oil capital of the US welcomed a solar power boom” を参考にしつつ、FIT認定情報などの公開データを用いて、私自身の視点で再構成したものです。

🔗How the oil capital of the US welcomed a solar power boom(BBC News)

テキサスは太陽光の州になった:農家が受け取る「もう一つの収穫」と、日本との違い

太陽光が「土地を持つ人の収入」になったテキサス。日本の大規模太陽光は、どこに、誰の手で建っているのか。

要約版

産油州が、米国最大の太陽光発電州に

テキサスは今も米国最大の産油州だが、今年に入ってカリフォルニアを抜き、大規模な太陽光発電所による発電量が全米1位になった。米エネルギー情報局(EIA)によると、昨年3月には初めて太陽光が石炭火力を上回った。電力需要が高まる暑い午後には、州内の電力の約3分の1を太陽光がまかなう日もある。

急拡大の理由は「速さ」と「安さ」

業界団体は理由を2つ挙げる。1つ目は、テキサスの送電網が他州から独立していて、太陽光の系統接続が安く早いこと。2つ目は、人口増による電力需要の伸びだ(2015〜2025年に15.8%増)。開発企業(OCI)によると、太陽光は今や州内で最も安い発電方法で、電力価格を25年間固定する契約(例:1MWhあたり40ドル)も可能だ。EIAは、米国の新設石炭火力の発電コストを90ドル近くとしている。

農家にとっての「もう一つの収穫」

太陽光には広い平地が必要なため、農家が事業の中心になった。リース契約は通常25〜30年で、賃料は毎年上がる。ウバルデの農家スティーブ・カージル氏(67歳)は、農地約600エーカー(全体の約4分の1)を貸し、年20万ドルを受け取っている。2018年の雹害で作物を失い、3人の子どもの誰も専業で継ぐ意思がなく、農場の存続が危ぶまれていた。今は干ばつでも営農を続けられ、第5世代への継承にも前向きだ。業界団体は、太陽光が使う土地は州全体の0.15%未満だと主張している。

反対の声も根強い

北東部フランクリン郡では、古木の伐採、開墾地を焼く煙、墓地の隣への建設、環境審査がないこと、蓄電池の火災リスクを理由に、住民が反対運動を続けている。同郡は保守的な地域だが、住民の反対で郡レベルの建設停止措置が実現した。しかし、事業者側の法的圧力で撤回された。トランプ大統領は太陽光・風力を「農家を破壊する」と批判し、再エネ税額控除の縮小に動いている。一方で、共和党支持層の68%が、コスト抑制には太陽光を含むあらゆる発電が必要だと考えているという世論調査もある。

※原文には契約年に「2001年」とあるが、2018年の出来事の後に続く話と合わないため、本稿では年に触れていない。また、原文の「$90 megawatts per hour」は、1MWhあたり約90ドルの意味と解釈した。

Editor’s Note

BBCの記事の核心は、太陽光発電が土地を持つ人の安定収入になっている点です。日本ではどうなのか。制度の面と、FIT認定情報のデータの面から整理します。

カージル氏の賃料を、日本の単位に直すと

600エーカーは約243ヘクタール、年20万ドルは1ヘクタール当たり約800ドル強(筆者試算)です。BBCによると、リースは25〜30年続き、賃料は毎年上がります。農地を「貸す」だけで、天候に左右されない収入が入り、農場の存続を支える仕組みになっています。

日本の農地は「二重の網」で守られている

日本では、農地を太陽光発電のために転用するには、2つの制度を通る必要があります。

制度内容
農業振興地域制度(農振法)農業上の土地利用のゾーニング。市町村が定める「農用地区域」(いわゆる青地)は、転用が禁止される。一定の要件を満たせば、区域から除外することはできる
農地転用許可制度(農地法)個別の転用を規制する。第1種農地(集団的な優良農地など)は原則不許可、第2種農地は他に立地が困難な場合に許可、第3種農地(市街地の農地など)は原則許可

許可権者は都道府県知事(または指定市町村の長)で、4haを超える場合は農林水産大臣との協議が必要です(農林水産省「農地転用を伴う太陽光パネルの設置について」令和6年10月)。

ここで大切なのは、「不可能」ではなく、優良農地ほど「原則として難しい」制度だという点です。農用地区域の外にある農地で、第3種農地(原則許可)や、他に適地がない場合に限られる第2種農地であれば、転用して太陽光を建てる余地があります。農用地区域の外(いわゆる白地)でも、第1種農地は原則不許可です。

例外の道:営農型太陽光(ソーラーシェアリング)

農地に支柱を立て、営農を続けながら上部で発電する方式が、営農型太陽光です。2013年3月の農林水産省通知で、支柱部分の「一時転用」許可の対象に、それまで原則不許可だった農用地区域内農地や第1種農地も含まれるようになりました。一時転用の期間は3年以内が原則で、認定農業者などの担い手が営農する場合、荒廃農地を活用する場合、第2種・第3種農地を活用する場合は10年以内です。

実績は、次の通りです。

  • 令和5年度末までの一時転用許可は6,137件、下部の農地面積は1,361.6ha(農林水産省、令和7年12月資料)
  • 耕地面積は令和5年で429.7万haなので、下部農地は約0.03%
  • 令和5年度の新規許可791件のうち、農用地区域内農地が78%(618件)、第1種農地が15%(119件)で、合わせて9割
  • 設置者は、発電事業者が73%(4,323件)、農業者・農地所有者が27%(1,630件)。ただし、発電事業者が設置する場合でも、売電収入の一部が営農維持費や賃借料として農地所有者や農業者に還元される例があると、農水省は説明している
  • 下部農地の営農に支障があるものは24%(1,221件)

令和6年4月には、許可基準を農地法施行規則に定め、ガイドラインも施行されました。改正再エネ特措法では、違反事業者にFIT/FIPの交付金を一時停止する措置も加わりました。

テキサスのように「農地を貸して安定収入を得る」モデルは、日本では優良農地だと制度上のハードルが高く、代わりの営農型でも、営農型でも設置者の7割強は発電事業者です。売電収入の一部が農地所有者に還元される例もあるため、農家の収入にどの程度つながっているかは、この数字だけでは分かりません。これは私の解釈です。

データで見る日本の太陽光:どこに集中しているか

資源エネルギー庁のFIT認定情報(2026年8月31日時点、太陽光、20kW以上)を集計しました。認定ベースの数字です。

  • 全国の太陽光は383,335件、合計約58.3GW
  • そのうち1,000kW以上の大規模設備は9,337件、約32.2GW(全体の約55%)。97.9%が運転開始の報告済み

図1は、県別の大規模設備の合計出力と、出力上位30設備の位置です。

(図1:県別の大規模太陽光(1,000kW以上)の合計出力と、出力上位30設備の位置(概略)を挿入)

県大規模設備の合計(MW)面積あたり(kW/km²)密度の順位
福島2,7591977位
茨城2,0333211位
宮城1,9162553位
栃木1,6372534位
北海道1,53819.544位
三重1,4462495位
千葉1,3692682位
岡山1,3361938位
福岡1,0732126位

面積は県全体で、山地も含みます。農地に対する密度ではない点に注意してください。

絶対量では福島が1位、密度では茨城が1位です。北海道は絶対量で5位ですが、密度では44位まで下がります。1,000kW以上の設備の平均規模は、福島が7.3MW、茨城が2.8MW、千葉が2.5MWで、福島は大規模な発電所が少数、茨城と千葉は中規模の設備が数多く散らばる、性格の違いが見えます。茨城の最大は約54MW、千葉は50MWです。

出力上位30拠点

出力の大きい順に並べた上位30設備の合計は約2,869MWで、全国の約4.9%です。30位でも59.9MWあり、50MW以上の設備は全国で46件、10MW以上は707件です。

順位都道府県市区町村事業者出力(MW)
1長崎県佐世保市(宇久島)宇久島みらいエネルギー合同会社400.0
2岡山県瀬戸内市瀬戸内Kirei未来創り合同会社186.0
3岡山県美作市パシフィコ・エナジー作東合同会社150.0
4宮城県白石市アマテラス・ソーラー合同会社135.4
5宮城県大崎市PurpleSol合同会社133.6
6青森県六ヶ所村合同会社ユーラス六ヶ所太陽光115.0
7和歌山県上富田町パシフィコ・エナジー和歌山メガソーラー合同会社92.4
8三重県津市パシフィコ・エナジー白山合同会社89.6
9兵庫県三田市パシフィコ・エナジー三田メガソーラー合同会社85.0
10福島県福島市アースインフラファンド合同会社80.0
10福島県郡山市福島郡山みらいエネルギー合同会社80.0
12福島県西郷村NOBSP合同会社79.9
13北海道安平町苫東安平ソーラーパーク株式会社79.0
14山口県周南市パシフィコ・エナジー徳山合同会社76.8
15福島県西郷村株式会社そら’p76.5
16鹿児島県大崎町鹿屋大崎ソーラーヒルズ合同会社75.6
17北海道八雲町北海道八雲ソーラーパーク合同会社75.0
17山口県岩国市合同会社東日本Solar1375.0
19群馬県安中市クリーンエネルギー研究所合同会社72.0
20鹿児島県鹿児島市鹿児島メガソーラー発電株式会社70.0
20岡山県和気町備前雲の上太陽光発電合同会社70.0
20三重県松阪市合同会社TSMH170.0
23岡山県真庭市合同会社NRE-46インベストメント68.6
24栃木県宇都宮市栃木宇都宮合同会社66.8
25宮崎県宮崎市パシフィコ・エナジー細江合同会社63.0
26兵庫県上郡町パシフィコ・エナジー播州メガソーラー合同会社62.9
27大分県大分市大分メガソーラー合同会社61.0
28福島県相馬市合同会社相馬伊達太陽光発電所60.0
28兵庫県上郡町パシフィコ・エナジー赤穂合同会社60.0
30三重県度会町合同会社宮リバー度会ソーラーパーク59.9

このリストから、次のことが読み取れます。

  • 県別では福島が5件、岡山が4件、三重と兵庫が各3件で、東日本に偏っているわけではありません。茨城と千葉は1件も入っていません。
  • 事業者は、合同会社が27件、株式会社が3件です。社名に「パシフィコ・エナジー」を含むものが8件あります。
  • 福島県西郷村には、隣り合う2件(79.9MWと76.5MW)が約0.4km離れて並び、合計は約156MWです(位置は概略)。
  • 所在地の字名には、山あいをうかがわせるものもあります(例:鳴子温泉鬼首字禿岳、津市白山町三ケ野字岩ノ谷、三田市上本庄字奥山)。ただし、住所だけで地目は判断できません。

日本とテキサスの比較

観点テキサス(BBCの記事)日本(本稿)
土地の位置づけ農家が農地を貸し、25〜30年の安定収入を得る農用地区域は転用禁止、第1種農地は原則不許可
農家の収入への道リース収入が中心(年20万ドルの例)営農型は農地の約0.03%。設置者の7割は発電事業者
反対運動郡の建設停止措置が、事業者の法的圧力で撤回された例自治体が条例で規制する例がある(南相馬市の条例など)
大規模設備の立地広い平地の農地(BBC)未検証

ここまでで言えること、言えないこと

言えること

  • 日本では、優良農地を太陽光のために転用するのは、制度上、原則として難しい。
  • 営農型は、耕地全体に占める割合が約0.03%で、設置者の7割強は発電事業者である。
  • 大規模設備の分布には、福島型(大規模が少数)と、茨城・千葉型(中規模が多数)の違いがある。

言えないこと

  • 大規模設備が、実際にどんな土地の上に建っているのか。

ここから先は仮説です。日本の大規模太陽光は、農地を避け、山林・原野・工場跡地などに向かったのではないか。

データについて

  • FIT認定情報(資源エネルギー庁、2026年8月31日時点)。認定ベースで、20kW未満は含みません。発電出力は「発電出力(kW)」の列を使いました。再生可能エネルギー電子申請サイトのお知らせページ(https://www.fit-portal.go.jp/publicinfo)より加工集計して利用しています。
  • 県境データはNatural Earth(10m)。面積あたりの値は、等積図法で算出しています。
  • 図1の設備の位置は、住所からの概略で、数km程度のずれがあります。
  • 農林水産省の数字は、資料ごとに年次が異なります。

記事には書けない分析の補足や、GIS分析の生データ・考察プロセスをお届けします。

個別の質問もTelegramにて直接受け付けています。

Telegramで質問する

※メールアドレスの登録は不要です。クリックするとTelegramが開きます。

TOP