- 2026年4月4日
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米国アルミ供給が逼迫:関税負担に加え、イラン戦争が追い打ちをかける
本記事は、The Wall Street Journal(2026年4月)“Tariffs Stra……

2026年4月28日撮影・Sentinel-1 SARデータによる分析
冒頭に掲げた画像を見てほしい。DEEP SEAの世界に無数の星が散らばっているように見えるが、これは宇宙ではない。2026年4月28日、ホルムズ海峡とその周辺海域を欧州宇宙機関(ESA)の衛星がレーダーで撮影した画像だ。輝く点の一つひとつが船舶である。石油を積んだタンカー、食料を運ぶ貨物船、そして身動きの取れないまま湾内に閉じ込められた乗組員たちの生活の場だ。
この画像は無料で、誰でも取得できる。それ自体が、現代の地政学における静かな革命を示している。
今回使用したデータはSentinel-1という欧州宇宙機関(ESA)が運用する公共衛星のものだ。Copernicus Data Space Ecosystemというサービスから、アカウントを登録すれば誰でも無料でダウンロードできる。
このSentinel-1が使っているのはSAR(合成開口レーダー)という技術だ。通常の光学カメラと違い、マイクロ波を地表に向けて発射してその反射を受信する。雲があっても、夜間でも、嵐の中でも関係ない。金属構造物は強くマイクロ波を反射するため、海面に浮かぶ船舶は夜空の星のように白く輝いて映る。
しかしSentinel-1の解像度は10メートル。船は「点」として見えるだけだ。
一方、商業SAR衛星の世界では革命が進んでいる。米国のUmbra社は25センチ、日本のiQPS社は46センチの解像度を実現している。Google Earthに匹敵するか、それ以上の精度で、空母の甲板に並んだ艦載機の機種まで識別できる。そしてこれらのデータは購入すれば誰でも取得できる。
かつて衛星画像は国家機密だった。冷戦時代、スパイ衛星の画像は大統領だけが見られる情報だった。それがいま、クレジットカード一枚で買える時代になった。
これはかつてのインターネットの普及と同じ現象だ。1990年代初頭、インターネットは軍事目的で開発されたARPANETが起源だった。それが民間に開放され、情報の非対称性を根本から変えた。衛星画像も同じ道を歩んでいる。かつて国家だけが持てた「空から見る目」が、いまや研究者にも、ジャーナリストにも、そしてブロガーにも開かれている。
この民主化が、軍事の常識を根底から覆しつつある。

SARで船舶サイズを判断する
レーダー反射の強さ=船の大きさ・金属量に比例します。
大きく明るい点・十字型の光芒が出ているもの
小さな点
空母打撃群は20世紀後半の最強の軍事力の象徴だった。最大30ノットで航行できるとはいえ、護衛艦や補給艦を含む打撃群全体では持続的に20ノット程度が限界だ。
Sentinel-1は同じ場所を6〜12日周期で撮影する。現在は3衛星体制でさらに頻度が高い。前回の位置と今回の位置を比較すれば、移動方向・速度・パターンが計算できる。商業SARを使えば数時間ごとの位置特定も不可能ではない。
中国はすでにこの手法を実戦レベルで研究している。対艦弾道ミサイルDF-21Dの射程は約1,500キロ、DF-26は約4,000キロに達する。アラビア海に展開する空母はDF-26の射程内に入る。衛星で位置を特定し、移動パターンを分析し、予測位置に向けてミサイルを発射する。理論上、この連鎖は成立する。
米国国防総省の年次報告書(2023年〜2025年版の推移)では、現在中国が最も注力して増産しているDF-26(グアム・キラー)は保有総数: 約500発〜600発以上となっている。
空母を守る側は電子妨害、デコイ、ランダムな機動パターンで対抗しようとしている。しかし衛星画像の取得コストが下がり続ける限り、この非対称性は攻撃側に有利に働く。米軍の空母打撃群(CSG)が1個艦隊で同時に迎撃できるミサイル数には限界があり、DF-26を一度に50発〜100発投入する「飽和攻撃」が行われた場合、現在のイージス・システムの計算能力とミサイル搭載量では、確率論的に着弾し沈没します。
「空母の時代は終わった」と断言するのは早計だ。しかし「衛星画像の民主化が空母の戦略的価値を根本的に問い直している」という事実は否定できない。
ホルムズ海峡を「管理」している国はどこか。多くの人はイランと答えるかもしれないが、正確ではない。
ホルムズ海峡は北側をイラン、南側をオマーンの飛び地であるムサンダム半島に挟まれている。UAEはムサンダム半島に接してはいるが、海峡には面していない。だからUAEではなくオマーンが海峡の南岸の当事国だ。
最も狭い部分の幅は約33キロ。タンカーが通航できる実質的な水域はさらに限られ、北西行きと南東行きの分離通航帯(TSS)はそれぞれ幅3キロ程度しかない。
国連海洋法条約(UNCLOS)は、国際航行に使用される海峡において沿岸国は「通過通航権」を妨げてはならないと定めている。法的にはイランもオマーンも、平和的に通過する船舶を止める権利はない。
つまりホルムズ海峡は法的には誰も「管理」していない国際公共財だ。
オマーンは中東外交の中で極めて独自のポジションを占めてきた。スンニ派が多数を占める湾岸諸国の中でイバード派という独自の宗派を持ち、イランとも米国とも実用的な関係を維持してきた。1980年に自国の軍事施設の使用を米軍に許可する協定に署名した最初の湾岸諸国であり、米国とのつながりが深い。2015年のイラン核合意の下交渉でも、オマーンが水面下で仲介役を担った。
しかし今回の危機でその立場が大きく揺らいだ。2026年3月1日、イランのドローンがオマーンのドゥクム港を攻撃した。ドゥクム港はホルムズ海峡の外側、オマーン海に面した港でアラビア海に直接アクセスできる戦略的要衝だ。封鎖下でも使用可能なため米軍が利用していた。イランはその拠点を攻撃することで「ホルムズ封鎖への外部からの干渉は許さない」という意思を示した。
皮肉なことに、イランは自らの仲介国を攻撃することで、米国との対話チャンネルを自ら傷つけた。それでもオマーンは外交を続けており、現在もイラン・米国双方と接触を保っている。
イラン革命防衛隊(IRGC)は2026年3月2日に海峡封鎖を宣言し、さらに通航料制度を法制化した。料金体系は1バレル1ドルで、200万バレル積みのスーパータンカー1隻あたり最大200万ドル(約3億円)。支払いはビットコイン、USDT、または人民元で要求されている。
しかしこれは国際法上の根拠を持たない。IMO(国際海事機関)はこの通航料を「国際海峡の通過通航権に反する」と批判している。イランが主張する「管理権」は武力による既成事実化の試みであり、法的正当性はない。
現在の状況は、法的には通航可能、実態的には通航困難という矛盾した状態だ。米国は「イランの港湾・沿岸地域に出入りする船舶のみ封鎖対象」と説明するが、現場では保険・機雷・攻撃リスクから多くの船が自主的に通航を回避している。
ホルムズ海峡の平時の通過量を改めて確認しておく。
世界が消費する原油の約20%、LNG取引量の約19%がこの海峡を通過する。1日あたりの通過量は原油換算で約2,000万バレル。船舶数では平時1日平均約140隻(全船種合計)が通過していた。日本にとってはさらに切実で、原油輸入量の約90〜95%が中東産であり、そのほぼ全量がホルムズ海峡経由だ。日本向けタンカーだけで年間約3,400隻、1日約9〜10隻が通過していた計算になる。
| 時期 | 1日あたり通過船舶数 |
|---|---|
| 2025年(平時) | 約93.7隻 |
| 2026年2月(封鎖直前) | 約109隻 |
| 2026年3月30日〜4月5日 | 平均8.4隻 |
| 2026年3月29日 | 3隻 |
| 2026年4月21日 | 3隻(試みたのみ) |
封鎖から約2カ月で通過船舶数は直前の通過船舶数の約3%に激減した。
現在ペルシャ湾内には約2,190隻の商船、約2万人の乗員が足止めされている。そのうち日本関係船舶は約44〜45隻、日本人船員24人が湾内に閉じ込められている。
原油先物価格は封鎖前の1バレル60ドル台から4月7日には112.95ドルまで急騰した。日本国内でもレギュラーガソリンが3月2日の1リットル158.5円から3月16日には190.8円に達した。エネルギーだけでなく、ナフサ・アンモニアなどの化学原料、食品、プラスチック製品と影響は連鎖している。
冒頭のSAR画像に戻ろう。あの無数の輝く点は観光地のイルミネーションでも、夜空の星座でもない。行き場を失ったタンカーと貨物船だ。その一隻一隻に乗組員がいて、家族がいて、届けるべき石油や食料がある。
この画像を、かつては国家の情報機関だけが見ることができた。いまは誰でも見られる。
衛星画像の民主化は、地政学の透明性を高めると同時に、軍事的な非対称性をも変えつつある。ホルムズ海峡という幅33キロの水道をめぐる攻防は、その最前線だ。
MarineTrafficの矢印にカーソルを合わせると船舶のデータを見ることができる。
MarineTraffic アイコンカラー一覧
| 色 | カテゴリ(船舶種別) | 内容 |
| 緑 (Green) | Cargo Vessels | 貨物船、コンテナ船など |
| 赤 (Red) | Tankers | 石油タンカー、ガス運搬船など |
| 青 (Dark Blue) | Passenger Vessels | 客船、クルーズ船、フェリー |
| 黄色 (Yellow) | Special Craft | 特殊船、高速船(HSC)、潜水作業船など |
| 水色 (Light Blue) | Tugs & Special Craft | 曳航船(タグボート)、水先案内船 |
| オレンジ (Orange) | Fishing | 漁船 |
| ピンク (Magenta) | Pleasure Craft | ヨット、レジャーボート、帆船 |
| グレー (Grey) | Unspecified / Other | 種別不明、あるいは軍艦(Naval)など |

イラン船籍と中国船籍の黄色の船舶だ。特殊船でオマーン湾とアラビア海の境界周辺にいる。AIに画像をスクショしてアップし、黄色の矢印だけをチェックさせても2船舶だけだった。笑い話かも知れないが、私自身の目視で確認して2隻を発見し、AIにチェックさせるという手法だ。AIは具体的にこの画像のこの場所と具体的に示すことが苦手だからだ。
黄色の船舶自体は平時でも見かけられるが、この状況下でしかもこのエリアにいるのに違和感がある。

