米国アルミ供給が逼迫:関税負担に加え、イラン戦争が追い打ちをかける

米国アルミ供給が逼迫:関税負担に加え、イラン戦争が追い打ちをかける

本記事は、The Wall Street Journal(2026年4月)“Tariffs Strained U.S. Aluminum Supplies. Now the Iran War Is Making It Worse.” を参考にしつつ、私自身の視点で再構成したものです。

🔗Tariffs Strained U.S. Aluminum Supplies. Now the Iran War Is Making It Worse.

関税によって米国のアルミニウム供給は逼迫したが、イラン戦争によって状況はさらに悪化している。

米国のアルミ市場が再び揺れている。ここ1年、米国は輸入アルミへの関税引き上げ(10% → 25% → 50%)と世界的な価格上昇により、すでにコスト圧力が高まっていた。そこにイラン戦争による中東の供給混乱が重なり、状況はさらに悪化している。

要約版

■中東の供給が急減

米国が輸入するアルミの約2割はペルシャ湾岸諸国から来る。しかし2月末の戦闘開始以降、湾岸地域からの出荷は大幅に減少。さらに先週、イランのドローン・ミサイル攻撃がアブダビとバーレーンの大手アルミ工場を直撃し、供給不安が一段と強まった。

■アルミ価格は1年で83%上昇

米国のアルミ「実質価格」は現在 1トンあたり6,100ドル(前年比 +83%)。 このうち 2,520ドルが関税や追加コストで、欧州の4,160ドルと比べても割高だ。

その結果、

  • 米国内メーカーは価格競争力を失い
  • 海外メーカーは関税を払ってもなお安く供給できる という逆転現象が起きている。

■企業現場の悲鳴

アルミ製トレーラーを製造する Reitnouer Trailers は、1台あたり約2トンのアルミを使用。 CEO は「値上げしても追いつかない」と語る。また、住宅向け大型窓を製造する Awake Window & Door では、原材料コストが 1年で70%上昇。 「関税で海外製品に優位性が出ると思ったが、結局どちらも値上がりしただけ」とCEOは話す。

■US 国内生産は増えず、在庫は2週間分に

関税の目的は米国内のアルミ精錬を増やすことだったが、在庫は 通常4〜6週間分 → 現在は約2週間分 にまで低下している。その原因は下記のとおりである。

  • 電力コストの高さ
  • 老朽化した設備 により、米国の稼働中の精錬所はごくわずか。

■カナダ産アルミも不安定

米国のアルミ消費の約70%を占めるカナダ産も、昨夏は関税負担を価格に転嫁できず出荷が減少。 一部は欧州へ流れ、今後は中東の供給を失った顧客が欧州市場に殺到する可能性もある。

■一方で恩恵を受ける企業も

アルミ価格の高騰は、アルコアなどの生産企業には追い風。 アルコアのアルミ部門の利益は前年の約3倍に増加し、株価も年初から35%上昇している。

Editor’s Note

関税負担が増えようが資源価格が高騰しようが主要資源の一次製品を扱っているメーカーにはほとんど影響がでないという構図。持てる者の強みであり秩序やルールは強者が決定するという現実がある。

日本のように法の支配とか安っぽい正義論を振りかざすだけで、世界が恐れる軍事力も経済力もない国にどの国もひれ伏すことはない。

US米国のアルミ製造量(最新データ)

USGS の 2026 年版統計によると、2025 年の米国アルミ生産量(推計値)は以下の通りです。 (単位:千トン)

区分2025年(推計)
一次アルミ生産(Primary)660千トン
二次アルミ(スクラップ由来)3,600千トン(新スクラップ 56%、旧スクラップ 44%)
ポイント
  • 米国の一次アルミ生産は長期的に減少傾向。
  • 現在稼働している一次アルミ精錬所はわずかで、国内需要の大半をリサイクルと輸入に依存。
  • 2025年の一次生産量 660千トンは、2021年(889千トン)からさらに縮小。

米国のアルミ輸入量(最新データ)

同じく USGS によると、2025 年の米国アルミ輸入量(推計値)は以下の通りです。

区分2025年(推計)
粗アルミ・半製品の輸入量4,400千トン
スクラップ輸入量890千トン
合計(粗材+スクラップ)5,290千トン
ポイント
  • 一次アルミ生産量(660千トン)の約7倍を輸入に依存
  • 輸入元の構成(2021–2024年平均):
    • カナダ:56%
    • UAE:8%
    • バーレーン:4%
    • 中国:3%
    • その他:29%
  • 特にカナダは最大の供給国で、米国のアルミ消費の約 70% を占める年もある。

アルコアの業績好調は「米国内製造の増加」ではない

→ 主因は “世界的なアルミ価格上昇” と “上流工程(ボーキサイト・アルミナ・一次アルミ)の国際事業” によるもの。 アルコアは米国企業だが、製造拠点の中心は米国外(特にカナダ・オーストラリア・ブラジル)であり、米国内の一次アルミ生産はごく小さい。

アルコアの売上構成(最新:2024年決算)

出典:Tickergate の 2025 年時点の売上構成データ

■ 製品別売上比率(2024年)

セグメント売上構成比
Aluminum(一次アルミ)72.5億ドル51.13%
Alumina(アルミナ)69.2億ドル48.87%
Bauxite(ボーキサイト)非開示(前年は4.66億ドル)少量
Energy1.18億ドルごく小さい

アルコアは “上流工程(鉱山〜精錬〜一次アルミ)に特化した企業” → 2016年の分社化で、下流の加工部門(Arconic)は切り離されている。

■地域別売上(最新データ)

Tickergate によると、主要販売地域は「UNITED STATES」と記載されているが、これは「販売先」であり「製造地」ではない点に注意。

アルコアの製造拠点は以下の通り(公開情報より)

  • カナダ:主要な一次アルミ製造拠点(3拠点のうち2つを運営)
  • オーストラリア:世界最大級のアルミナ精製施設
  • ブラジル:ボーキサイト鉱山・アルミナ精製
  • 米国:一次アルミの稼働はごく一部のみ

つまり、売上の多くは “米国向け販売” だが、製造は主に米国外。

なぜアルコアの業績が好調なのか(要点)

① 世界的なアルミ価格の高騰

  • 2026年、ホルムズ海峡の混乱で世界供給の約10%が停止
  • アルミ価格は 1トンあたり3,400ドル超(10年ぶり高値)

→ アルコアは “上流の一次アルミ生産者” のため、価格上昇がそのまま利益に直結。

② アルミナ事業の完全統合

  • 2024年に Alumina Limited を完全買収
  • 世界最大級のアルミナ供給企業に

→ アルミナ価格上昇の恩恵もフルに受けられる構造へ。

③ 米国関税の影響

結果として 米国市場での販売マージンが改善

米国のアルミ価格は関税で世界より高い

アルコアはカナダ生産が中心のため、関税負担を価格に転嫁しやすい

アルコアの国別生産能力一覧(2025年時点)

主な拠点生産能力(一次アルミ・アルミナ合計)特徴
オーストラリアKwinana(精製停止)、Pinjarra、Wagerup8.5 Mt/年(アルミナ)世界最大級のアルミナ精製能力。Kwinana閉鎖後もPinjarra・Wagerupが稼働。
ブラジルAlumar(São Luís)、Juruti鉱山3.5 Mt/年(アルミナ)ボーキサイト採掘+精製一貫体制。水力発電を活用。
カナダBaie-Comeau、Bécancour、Deschambault1.3 Mt/年(一次アルミ)水力発電による低炭素アルミ。米国向け輸出の中心。
スペインSan Ciprián1.0 Mt/年(アルミナ+一次アルミ)欧州拠点。2025年に操業安定化プログラム進行中。
ノルウェーLista、Mosjøen0.5 Mt/年(一次アルミ)水力発電利用。2024年に生産記録更新。
米国Warrick、Massena、Intalco(休止)0.6 Mt/年(一次アルミ)関税影響下でも生産維持。Warrickは板材向け。
サウジアラビアMa’aden JV(売却予定)0.74 Mt/年(アルミナ+一次アルミ)共同事業。2025年に25.1%持分売却発表。
アイスランドFjardaál0.35 Mt/年(一次アルミ)水力発電利用。高効率精錬。
その他(ギニア・ジャマイカなど)鉱山・供給拠点25 Mt/年(ボーキサイト)ギニア・ブラジルで採掘。中国・欧州へ供給。

セグメント別構成(2025年報告値)

セグメント主な国年間生産能力備考
Bauxite(ボーキサイト)ギニア・ブラジル・オーストラリア45 Mt/年ギニアが最大。輸出・自社精製用。
Alumina(アルミナ)オーストラリア・ブラジル・スペイン13 Mt/年世界シェア約15%。
Aluminum(一次アルミ)カナダ・米国・ノルウェー・スペイン2.8 Mt/年水力発電比率が高く、低炭素製品を展開。

(参考)材料別画像

(参考)材料別製品化詳細

アルミナ(Alumina:酸化アルミニウム)から生まれる製品

アルミナは「金属になる前の素材」でありながら、電子・化学・耐熱分野で独立した高機能材料として使われます。

分野製品例特徴・用途
セラミックス・電子材料半導体基板、絶縁体、ICパッケージ高い耐熱性・絶縁性。電子部品の基盤素材。
研磨材サンドペーパー、研磨パッド非常に硬く、金属・ガラス研磨に使用。
耐火材炉の内張り、鋳造用耐火レンガ2000℃近い高温に耐える。製鉄・ガラス炉に必須。
触媒担体自動車排ガス触媒、化学反応触媒表面積が大きく、化学反応を促進。
医療・化粧品歯磨き粉、皮膚研磨剤微粒子の硬度を利用。人体に安全な酸化物。

一次アルミ(Primary Aluminum:電解精錬された金属アルミ)から生まれる製品

アルミナ(酸化アルミニウム:Al₂O₃)を電解して得られる金属が「一次アルミ(Primary Aluminum)」です。そして、一次アルミは「工業製品の素材」として、軽量・耐食・導電性・加工性のバランスが非常に良い金属。世界中の製造業の基盤を支えています。

分野製品例特徴・用途
輸送機器自動車ボディ、航空機部品、鉄道車両軽量・高強度。燃費改善・CO₂削減に貢献。
建築・インフラサッシ、外壁パネル、橋梁部材耐食性・加工性が高く、長寿命。
包装材飲料缶、食品包装、医薬品パッケージ薄くても遮光・防湿性が高い。
電気・電子ケーブル、ヒートシンク、スマホ筐体導電性・放熱性に優れる。
日用品鍋、フライパン、家具、照明器具軽くて美しい金属光沢。加工が容易。

国・地域別:アルミ価格決定メカニズム(比較表)

地域価格の基準上乗せ主な要因特徴
米国(USA)LME価格Midwest Premium(MWP)関税(25〜50%)、物流、在庫、保険世界で最も高いプレミアム。関税が価格を押し上げる構造。
EU(欧州)LME価格European Duty-Paid Premium輸入関税、港湾費用、在庫、物流輸入依存度が高く、プレミアムは200〜300 USD/トン。
中国(CHN)SHFE価格(国内先物) + 為替調整国内需給プレミアム電力コスト、輸入関税、国内在庫LMEと連動しつつ、国内需給で乖離。価格はやや高め。
日本(JPN)LME価格Japan Port Premium(JPP)港湾費用、保管、物流、四半期交渉四半期ごとに商社と交渉。100〜120 USD/トンが目安。
中東(UAE・バーレーン)LME価格地域プレミアム(小さい)ガス火力の安い電力、輸出港コスト自給+輸出型。プレミアムは50〜70 USD/トンと低い。

世界のボーキサイト産出量ランキング(2023年)

これは World Mining Data 2025(2023年実績) に基づくランキングです。

ランキング産出量(Mt=百万トン)
1位ギニア123.07 Mt
2位オーストラリア99.06 Mt
3位中国65.52 Mt
4位ブラジル32.03 Mt
5位インド23.36 Mt
6位インドネシア9.89 Mt
7位ロシア6.87 Mt
8位ジャマイカ5.99 Mt
9位サウジアラビア5.90 Mt
10位カザフスタン4.56 Mt

ギニアのボーキサイト輸出先ランキング(推定・2024–2025年)

1位:中国(圧倒的)

  1. ギニアの輸出の 70〜80% を占める
  2. 中国のアルミ精錬能力(43Mt/年)の大部分がギニア産に依存
  3. 2025年Q3の輸出急増(+23%)も「中国向け需要増」が主因

2位:インド

  1. インドの一次アルミ生産(4.2Mt/年)を支える重要供給源
  2. Vedanta・Hindalco がギニア鉱山と長期契約

3位:ロシア

  1. Rusal がギニアに大規模鉱山(CBG・Dian Dian)を保有
  2. 自社 smelter 向けに輸入

アルミ1トンを作るのに必要な電気

IAI の最新統計によると、世界平均の一次アルミ精錬に必要な電力量は:

約 14,000kWh/トン

直感的にわかる比較(14,000 kWh とはどれくらい?)

■ 一般家庭の電力使用量との比較

日本の平均家庭の年間使用量は約 4,000〜5,000 kWh

アルミ1トンを作る電力 = 一般家庭の約3年分の電気

■ 電気自動車(EV)の走行距離に換算

EVは 1kWh で約 6〜7km 走行。

14,000kWh×6.5km≒約 9万km

アルミ1トン = EVが地球2周以上走る電力

■ データセンターのサーバー稼働時間

サーバー1台(300W)なら:14,000kWh÷0.3kW=約 46,000 時間(5.2年)

アルミ1トン = サーバー1台を5年以上動かせる電力

地域別の電力消費(2024年 IAI データ)

地域電力使用量(kWh/トン)
中国13,262
世界平均13,990
アフリカ14,208
GCC(湾岸諸国)14,618
アジア(中国除く)14,677
北米15,016
欧州15,619
南米15,855
オセアニア16,302

なぜこんなに電力を使うのか

アルミ精錬は、 アルミナ(Al₂O₃)を電気分解してアルミを取り出す「電解プロセス」であり、 世界の金属製造の中でも最も電力集約的な工程のひとつ。

  • 電解槽(ポット)を 約950℃ に維持
  • 強力な直流電流を流し続ける
  • 24時間365日稼働(止めると固まって再起動に莫大なコスト)

電力コストがアルミ価格の30〜40%を占めることもある

世界の電気代が安い国ランキング(2025年・1kWhあたり)

ランキング電気代(USD/kWh)
1位イラン$0.00
2位イラク$0.01
3位アンゴラ$0.01
4位ブータン$0.01
5位シリア$0.01

※アルミ精錬に必要なのは「安い電気」ではなく「止まらない電気」という大前提がある。

  • 超安定した電力
  • 周波数変動が極小
  • 長期契約で確保できる電源
  • 送電網の信頼性

ボーキサイト輸送コストが安い国

ギニアを基準に検証すると次のとおりである。

  1. 中国:$10〜15/トン
  2. UAE:$12〜18/トン
  3. イラン:$20〜30/トン

世界のアルミ精錬は「電力の質 × 政治安定 × 資本」で決まる

電力政治安定資本結果
中国安い・安定巨大世界1位(43Mt)
カナダ水力・安定低炭素アルミの中心
UAE安い・安定世界5位
ノルウェー水力・安定高効率
オーストラリア安定中規模

最も安くアルミを作れる国ランキング

電力単価・電力の安定性・設備の新しさ・原料アクセスから見た「構造的にコストが低い国」を整理すると、だいたいこういう世界観になります。

おおよその順位国・地域安く作れる理由の中核
1位中国安い電力+巨大クラスター+フル稼働の設備
2位UAE安いガス火力+最新鋭 smelter+輸出特化
3位バーレーン世界最大級単一 smelter+高稼働率
4位カナダ安い水力発電+低炭素プレミアムも取れる
5位ノルウェー水力×高効率設備=「グリーンアルミ」ポジション

中国VS日本

比較するまでもまくアルミの原材料のボーキサイト産出量は世界3位で資源もあり、世界最大のsmelterがありアルミの最大消費国でもあります。電力の安い地域に集中させているのが分かります。電力価格は国家で統制していると思うので、日本との単純比較には意味はないですが世界制覇に向けた明確な戦略を感じます。

  • 内モンゴル(石炭火力 × 超大型 smelter 集積地)
  • 山西省(アルミナ+一次アルミの一大クラスター)
  • 新疆(電力が極めて安く、巨大 smelter が多い)
  • 四川省(水力発電 × 低炭素アルミ)
  • 雲南省(水力依存の新興 smelter 地帯)

戦略なき国家と言われてきた日本では到底太刀打ちできません。高市政権では明確に重点項目を設定して強い日本を目指していることは素晴らしいことです。政治家の国会答弁を見ていても、自民党の足を引っ張ることか弱者救済に税金を使うことばかりで国がますます貧乏になっていきます。

一時的に弱者になった人を助けるセーフティネットは必要ですが、永続して弱者から這い上がれない人を税金で救済していたら他国に負けます。お金を生むものに税金を再投資してより強大な国家にならなければならないと思います。

為替について円安傾向で物価高、これを是正する最良の特効薬は貿易収支を黒字化させればいいだけです。経常収支は日本は黒字になる構造が今はあるので必ず円高へ修正されます。為替は結局のところ国力に追随するからです。

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