エネルギー危機の欧州が、再び原子力に目を向ける理由

エネルギー危機の欧州が、再び原子力に目を向ける理由

本記事は、BBC(2026年4月)の “Faced with new energy shock, Europe asks if reviving nuclear is the answer” を参考にしつつ、私自身の視点で再構成したものです。

🔗Faced with new energy shock, Europe asks if reviving nuclear is the answer

新たなエネルギー危機に直面した欧州は、原子力発電の復活が解決策となるのかを問いかけている。

要約版

中東情勢の緊迫化でエネルギー価格が再び急騰し、欧州では「エネルギー自立」への議論が再燃している。
その中心にあるのが、長らく敬遠されてきた 原子力の復権 だ。

EU委員会のフォンデアライエン委員長は、過去に欧州が原子力を縮小したことを「戦略的誤り」と指摘。
1990年に電力の3割を占めていた原子力は現在15%まで低下し、欧州は化石燃料輸入に大きく依存する構造になった。

各国の動きは加速している。
イタリアは原子力禁止の撤廃を検討し、ベルギーは方針を大転換。スウェーデンは40年ぶりに原子力回帰を決定し、英国も規制簡素化で新規建設を後押しする。
フランスは依然として欧州最大の原子力国で、電力の65%を原子力で賄う。

一方で、原子力は即効薬ではない。
建設の長期化、老朽炉の維持、廃棄物問題、そしてコスト面での再エネ優位など、課題は多い。
欧州委員会はより小型で量産可能な SMR(小型モジュール炉) に期待を寄せ、2030年代初頭の実用化を目指すが、商業規模ではまだ未実証だ。

欧州が中長期的に原子力を必要とするのは確かだが、当面は依然として化石燃料への依存が続く。「原子力は解決策の一部にすぎない。増やすには時間も資金も必要だ」と専門家は指摘する。

Editor’s Note

このブログを始めてから中国の凄さを実感している。全てにおいて圧倒的な一番の領域を構築している。日本はこの30年間何をしてきたのか。習近平国家主席を始め歴代の国家主席が進めてきた戦略・政策が強く世界経済に影響を与える国家へと変貌させた。

ここでは原子力発電の良し悪しは問題にしない。世界の電力消費量、その発電構成、日本の原子力発電状況等を踏まえ、私独自の東京都発電構想を書いていきたい。そして二酸化炭素の発生量の観点から欧州を中心として石炭や火力発電が忌み嫌われているが、日本の国土の特徴(国土の約75%が山地・丘陵で森林に覆われた、起伏の激しい弓なりの島国)から火力発電が主たる発電設備にならざるを得ない。火力発電についても可能な限り触れることにする。

世界の電力消費量トップ10(2023–2024年データ)

ランキング国名電力消費量主な発電構成(TWh, 2023–2024)
1位中国8.9兆 kWh石炭 5,860 / ガス 303 / 水力 1,354 / 原子力 445 / 風力 992 / 太陽光 834
2位米国4.1兆 kWh石炭 653 / ガス 1,865 / 水力 236 / 原子力 782 / 風力 453 / 太陽光 303
3位インド1.5兆 kWh石炭 1,534 / ガス 57 / 水力 156 / 原子力 54 / 風力 82 / 太陽光 134
4位ロシア1.0兆 kWh石炭 225 / ガス 538 / 水力 210 / 原子力 216 / 風力 6 / 太陽光 3
5位日本9,132億 kWh石炭 326 / ガス 347 / 水力 78 / 原子力 85 / 風力 11 / 太陽光 102
6位ブラジル6,104億 kWh石炭 16 / ガス 48 / 水力 415 / 原子力 16 / 風力 108 / 太陽光 75
7位韓国5,642億 kWh石炭 205 / ガス 169 / 水力 4 / 原子力 180 / 風力 3 / 太陽光 29
8位カナダ5,498億 kWh石炭 25 / ガス 93 / 水力 364 / 原子力 89 / 風力 39 / 太陽光 8
9位ドイツ4,759億 kWh石炭 125 / ガス 78 / 水力 20 / 原子力 7 / 風力 137 / 太陽光 61
10位フランス4,126億 kWh石炭 2 / ガス 30 / 水力 57 / 原子力 338 / 風力 49 / 太陽光 22

ポイント解説

特徴
中国石炭依存+再エネ急拡大
米国ガス火力中心+原子力も大規模
インド石炭依存が最も強い
ロシアガス火力+原子力
日本火力中心、再エネは太陽光が主
ブラジル水力中心のクリーン電源
韓国原子力比率が高い
カナダ水力が圧倒的
ドイツ原子力ゼロ化後、風力依存が増大
フランス世界屈指の原子力国家

全国原発一覧(2026年版・完全版)

出典:NRA「Present States of Operation」2026/1/14 更新

2026年1月時点の総括として稼働中(運転中)11基、停止中(審査中・定期検査中)23基、廃止22基なので40%の原子力発電が廃止決定となっている。廃止後は発電能力をどうカバーしていくのか具体的な計画が欲しいところ。

北海道電力エリア

発電所都道府県号機出力状態
北海道1号57.9万kW停止(定期検査中)
2号57.9万kW停止(定期検査中)
3号91.2万kW停止(定期検査中)

東北電力エリア

発電所都道府県号機出力状態
女川宮城1号52.4万kW廃止
2号82.5万kW停止(再稼働準備)
3号82.5万kW停止(定期検査中)
東通青森1号110万kW停止(審査中)

東京電力エリア

発電所都道府県号機出力状態
福島第一福島1〜6号46〜110万kW全基廃止(廃炉作業中)
福島第二福島1〜4号110万kW全基廃止措置中
柏崎刈羽新潟1号110万kW停止(定期検査中)
2号110万kW停止
3号110万kW停止
4号110万kW停止
5号110万kW停止
6号135.6万kW停止
7号135.6万kW停止

日本原電エリア

発電所都道府県号機出力状態
東海第二茨城2号110万kW停止(定期検査中)
敦賀福井1号35.7万kW廃止
2号116万kW停止(審査難航)

中部電力エリア

発電所都道府県号機出力状態
浜岡静岡1・2号廃止
3号110万kW停止
4号113.7万kW停止
5号138万kW停止

北陸電力エリア

発電所都道府県号機出力状態
志賀石川1号54万kW停止
2号135万kW停止

関西電力エリア

発電所都道府県号機出力状態
美浜福井1・2号廃止
3号82.6万kW運転中
高浜福井1号87万kW運転中(延長認可)
2号87万kW運転中(延長認可)
3号87万kW運転中
4号87万kW運転中
大飯福井1・2号廃止
3号118万kW運転中
4号118万kW運転中

中国電力エリア

発電所都道府県号機出力状態
伊方愛媛1・2号廃止
3号89万kW運転中

九州電力エリア

発電所都道府県号機出力状態
玄海佐賀1・2号廃止
3号118万kW運転中
4号118万kW運転中
川内鹿児島1号89万kW運転中
2号89万kW運転中

核分裂炉(現在の原子力)と核融合炉(未来の原子力)の違い

高市首相も度々発言している、核融合(fusion)と既存の核分裂炉(fission)について比較してみよう。

仕組みの違い(直感的なイメージ)

項目核分裂(現在の原発)核融合(未来の発電)
何をする?重い原子(ウラン)を割る軽い原子(重水素・三重水素)をくっつける
例えると大きな岩を砕いてエネルギーを出す小さな玉を高速でぶつけて融合させる
反応の特徴反応が続きやすい(暴走の可能性)反応が自然に止まる(暴走しない)

■放射能の出方の違い

核分裂(現在の原発)

  • ウランを割ると 核分裂生成物(セシウム・ストロンチウムなど) が大量に生まれる
  • これらは 強い放射能を持ち、数百〜数万年残る
  • さらに、使用済み燃料には プルトニウムなど長寿命の核種 が含まれる

核融合(未来の原発)

  • 燃料は 重水素(海水から取れる)と三重水素(リチウムから生成)
  • 核融合反応そのものは 放射性物質をほとんど生まない
  • ただし、反応で出る高速中性子が炉壁を少し放射化する
  • 放射能の強さは核分裂の廃棄物よりはるかに弱い
  • 数十年〜100年程度で安全レベルまで減衰する

安全性の違い

観点核分裂核融合
暴走の可能性あり(メルトダウン)なし(反応は自然に止まる)
放射性廃棄物多い(長寿命)少ない(短寿命)
燃料の危険性ウランは扱いに注意重水素は海水から取れる・安全

発電量(ポテンシャル)の違い

項目核分裂核融合
1基あたりの出力約100万〜150万kW将来は200万〜300万kW以上の可能性
燃料の量限られる(ウラン)ほぼ無限(海水中の重水素)

環境への影響

観点核分裂核融合
CO₂排出ほぼゼロほぼゼロ
廃棄物長期間管理が必要数十年で減衰するレベル
事故時の影響大きい可能性小さい(反応が止まる)

■廃棄物の量と性質の違い

核分裂(現在の原発)

  • 使用済み燃料は 高レベル放射性廃棄物
  • 1基あたり年間 数トン
  • 地層処分が必要(数万年スケール)
  • 再処理してもプルトニウムが残る
  • 長期管理が必須

核融合(未来の原発)

  • 廃棄物は炉壁などの構造材が放射化したもの
  • 量は核分裂の 1/100〜1/1000 程度
  • 数十年で再利用可能なレベルまで減衰
  • 地層処分は不要とされる(現時点の想定)

技術の成熟度

項目核分裂核融合
商用発電すでに実用化まだ実現していない
世界の状況400基以上が稼働実験炉のみ(ITERなど)
実用化の予測現在の主力早くて2050年代

核融合炉は大きくなる?小さくなる?

核融合炉は“太陽を地上に閉じ込める装置”であり、核分裂炉とは構造が根本的に違う。つまり太陽の中心と同じ環境(1億度)を作る必要があるので下記の設備が必要になる。

  • 強力な磁場
  • 厚い遮蔽材
  • 巨大な真空容器
  • 中性子を吸収するブランケット

ITER(フランスで建設中の実験炉)

  • 高さ:約30m
  • 重さ:約23,000トン
  • 建屋全体はサッカー場数個分
  • 現在の原発より 巨大

小型化の流れもある(SMF:Small Modular Fusion)

  • 直径数メートルの装置
  • 出力は数十万kW規模
  • 原発より小さい可能性もある

火力発電と原子力発電

火力発電と原子力発電とでは使用される燃料が違うのは誰にでも分かっている。そんな中で他に違う部分は何なのか見てみよう。

ここで石炭火力で石炭を燃焼したときにタールが出て設備がべとべとにならないのかという疑問にお答えしよう。

タールは300〜700℃の低温域で発生するので、石炭火力発電はタールが生成する温度帯を一瞬で通過するため、タールが残らない。

  • 微粉炭を 50〜100μm に粉砕
  • 空気と混合して噴射
  • 1,200〜1,500℃で瞬間燃焼
  • 炭化水素は完全分解
  • 残るのは灰分のみ

蒸気条件と効率の比較

発電方式蒸気温度蒸気圧力効率
石炭火力(USC)600〜620℃24〜26MPa42〜45%
石炭火力(A-USC:次世代)700〜730℃30MPa級46〜48%(目標50%)
原発280〜300℃7MPa前後30〜33%
地熱120〜200℃1〜2MPa10〜20%

タービンの大きさ比較一覧

種類代表出力物理サイズ(概算)回転数温度条件特徴
原子力発電タービン(蒸気)900〜1,350 MW長さ 40〜50 m、重量 500〜700 t1,500 rpm(低速)約 280〜300℃(低温・低圧蒸気)最も巨大。低温蒸気のため羽根径が大きくなる。
石炭火力タービン(蒸気)600〜1,000 MW(USC)長さ 30〜40 m、重量 300〜500 t3,000 rpm約 600℃(超々臨界)高温蒸気で効率が高い。原子力よりコンパクト。
LNGコンバインド蒸気タービン300〜500 MW長さ 20〜30 m3,000 rpm約 550〜600℃ガスタービン排熱を利用。石炭より小型。
大型ガスタービン(GT)400〜500 MW(J級)長さ 10〜15 m、重量 200〜300 t3,000 rpm1,500〜1,600℃(燃焼温度)最もコンパクトで高出力。航空エンジンの巨大版。
中型ガスタービン50〜200 MW長さ 5〜8 m6,000〜9,000 rpm1,200〜1,400℃工場・地域電源向け。
航空転用ガスタービン(LM6000等)40〜60 MW長さ 3〜4 m6,000〜10,000 rpm1,200〜1,400℃ジェットエンジンベース。軽量・高回転。

LNG火力が石炭火力より効率が高い理由

LNGは“ガスタービン+蒸気タービン”の複合発電(コンバインドサイクル)が使える

  • ガスタービンでまず発電
  • その排熱(600℃以上)で蒸気を作ってもう一度発電

ガスタービンとは分かりやすく言うと内燃機関と同じ仕組みであり車のエンジンのピストンの動きから電気を発生させることに似ている。その時の余熱を使って水を沸騰させ蒸気タービンを回して電気を発生させるという発電の2毛作をLNG火力発電は行っているので効率がいい。

石炭はガスタービンが使えない

石炭は固体燃料なので、ガスタービンのように直接燃焼ガスをタービンに吹き込む方式が使えない。

  • ボイラーで水を沸かす
  • 蒸気タービンだけで発電
発電方式方式典型効率
LNG火力(コンバインドサイクル)ガスタービン+蒸気タービン55〜63%
石炭火力(USC/A-USC)蒸気タービン単独42〜48%
原発蒸気タービン単独(低温)30〜33%
地熱蒸気タービン単独(低温)10〜20%

東京沖クリーン電源クラスター構想

東京の南に連なる島々を、地熱・風力・洋上風力の“発電ノード”として束ね、HVDCで東京に送り込む巨大クリーン電源網。八丈島 → 三宅島 → 新島 → 房総半島という一直線のラインがそのまま“送電幹線”になる。

念のために近くの伊豆半島を通さずに遠回りな房総半島にした理由を述べる。

伊豆半島直行ルートの問題点

  • 伊豆半島沖は急峻で深い
  • 海底断層が多い
  • ケーブル保護が難しい
  • 変電所が小さい
  • 送電線が細い
  • 地震断層が多い
  • 東京電力の基幹系統(500kV)が通っていない

房総半島ルートのメリット

海底ケーブル敷設コストは距離 × 深度 × 地形リスクで決まる。房総半島ルートの方が浅い海域をつなぎやすく、地形が素直。したがって敷設コストが低く済むだけでなく故障時の復旧にもメリットが大きい。そしてどの区間も現実的なHVDCケーブル長に収まる。

  • 八丈島 → 三宅島:約 75 km
  • 三宅島 → 式根島:約 40 km
  • 式根島 → 新島:約 5 km
  • 新島 → 房総半島:約 120〜150 km

最大のメリット

  • 500kV基幹系統が集中
  • 富津・袖ケ浦・南房総に巨大変電所
  • LNG火力群があり系統が太い
  • 東京湾岸の大動脈に直結できる

島ごとの役割分担(電源ノード化)

■ 八丈島:地熱 × 風力の“ベースノード”

  • 地熱:50〜100 MW
  • 風力:100〜200 MW
  • 年間発電量:15〜20億kWh
  • 特徴:安定電源(地熱)+大量電源(風力)

■ 三宅島:洋上風力の“ハブ”

  • 外洋風が強く、浅瀬も多い
  • 洋上風力:100〜200 MW級が狙える
  • 年間発電量:10〜15億kWh
  • 特徴:風況が極めて良い

■ 新島・式根島:送電中継+小規模風力

  • HVDCの中継点として最適
  • 小規模風力:10〜20 MW
  • 特徴:送電ルートの安定化

クラスター全体の発電量(概算)

電源規模年間発電量
八丈島地熱+風力150〜300 MW15〜20億kWh
三宅島洋上風力100〜200 MW10〜15億kWh
新島小規模風力10〜20 MW1〜2億kWh

約25〜35億kWh/年

  • 原発1基(70〜90億kWh/年)の 3〜5割
  • LNG火力1基(50〜70万kW級)に匹敵
  • 東京23区の家庭用電力の 5〜7% を賄える規模

最適な送電ルート(HVDC)

距離 約300 km→ 世界のHVDCでは“短距離”に分類される

容量 300〜500 MW級 HVDC が最適

年間送電量(300 MW線の場合)1回線 13〜18億kWh/年(約半分〜2/3を送電可能)、2回線 ほぼ全量送電可能

世界の“電源クラスター”事例との比較

■デンマーク「エネルギー島」

  • 北海に人工島を作り、洋上風力を集約
  • HVDCで欧州各国へ送電→ 東京沖クラスターと構造がほぼ同じ

■アイスランド

  • 地熱+水力で電力が余る
  • 欧州へ海底ケーブルで輸出計画→ 八丈島の地熱ノードと同じ思想

■英国北海クラスター

  • 複数の洋上風力をHVDCで束ねる→ 三宅島・新島の役割と一致
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